原子力発電はYES?NO?考えてみてください。
環境問題を考える上で、「原子力発電(原発)」の問題は避けて通れない道です。
原子力発電は、は高度な技術がつかわれていたり、メリット・デメリットが非常に煩雑で、
さらに情報の多くがブラックボックスになっています。
原発は環境にとって「悪」だという意見もあります。
一方で、原発は温暖化問題の救世主とも言われています。
いったいどちらが正しくて、どちらを信じればよいのでしょうか?
ただ少なくとも、原発はわからないから、関係ないからと逃げてはいけません。
なぜなら、原発はいくつもの課題を「将来の世代」に残しているからです。
一度、原発についてじっくり調べてみたり、ご友人や同僚と話してみましょう。
急速に盛り上がる原発
温暖化問題を受け、原発推進の動きが活発化しています。
さらに、近いうちに、長らく稼動が延期されてきた、青森県の六ヶ所村の再処理工場がいよいよ稼動する予定です。
中国を始めとするアジア各国では、原発の建設ラッシュが始まっています。
経済的な側面から見れば、原発の建設、関連施設の建設、運用には
何兆円という巨額の費用が動いています。
(こういう巨額の費用が動くときには、人間の醜いところがでて、 未来の世代や弱者が被害を蒙らないことがあります)
未来の世代に説明する責任
原子力発電に関して、私たちの前には、ずっと2つの選択肢があります。
原子力発電を、推進するか、否かです。
どちらを選んでもいいですが、選ぶには理由が必要です。
なぜなら、私たちには未来の世代に対して説明する責任があるからです。
まずは原発に関する質問から
次の質問に答えられますでしょうか?
(1)なぜ日本は原子力発電を推進するのでしょうか?
(2)日本の発電力量の何割が原発により得られているのでしょうか?
(3)10年後には原子力発電の発電量は全体の何割になる予定でしょうか?
(4)六ヶ所村に建設されている再処理工場とは何でしょう?
(5)再処理工場では何が再処理されるのでしょうか?
(6)プルサーマルとは何でしょう?
(7)プルサーマルによりどんな効果が得られるのでしょう?
(8)プルサーマルは今どうなっているのでしょうか?
(9)放射性廃棄物はどうやって処分されているのでしょうか?
(10)原子力発電に賛成でしょうか?反対でしょうか?
こういう質問に、ある程度答えられるだけの知識と考えを持つ必要があると思います。
原子力発電は日本のベース電源になっている
原子力発電による電力はおよそ日本の電力の30%となっています。
電力を得るための資源には、石油、石炭、LNG(天然ガス)、ウラン、そして水力や風力、太陽光などの自然エネルギーがあります。
自然エネルギー以外の資源に乏しい日本では、石油やLNGなどの枯渇性資源の輸入に頼らざるを得ず、これらの資源の獲得リスク (輸出停止、価格高騰、枯渇など)を分散するために、複数の資源に頼る方策を採りました。
電力には、作る電力と使う電力が等しくなければならないという制約がありますので、変動する消費量に合わせて出力を調整しなければなりません。
そこで、出力調整の時間がかかり、リスクも高い原子力発電はベースとして出力を一定とし、その他の発電方式を消費にあわせて変動させるという方法がとられています。(ベストミックス)
原子力発電のメリット
政府や電力会社のいう原子力発電のメリットは、次の5つです。
(1)石油・石炭・LNGなどの化石燃料に依存しない
(2)石油や石炭、LNGなどは政治情勢の悪い中東からの輸入に依存しているため、リスクが高いが、ウランは政情の安定した国からの輸入であり、安定供給性がある
(3)原子力発電のコストのうち、原材料コストが占める割合が低く、ウランが高騰しても、電気代への影響が小さい
(4)発電時に温室効果ガスであるCO2の排出がほとんどない
(5)使用済み燃料をリサイクルできる
しかし、このメリットには疑問があります。
まず政情は常に変化するものですし、石油などの供給先を分散できないはずがありません。
原材料コストが低くても、原発は間接的なコスト、将来にかかるコストが正確にはわからないですが、たぶん多大でしょう。
また、リサイクルに関しては問題が山積みですし、リサイクルという言葉の使い方自体がおかしいと考えます。(後述)
結局、原発のメリットは 「石油・石炭・LNGなどの化石燃料に依存しない」ことと、
「CO2排出が少ないこと」だけなのではないでしょうか?
原子力発電のデメリット
一方、原子力発電のデメリットで代表的なものは次の5つです。
(1)発電処理の前後を含めて放射能汚染のリスクがある
(2)ウラン自体が50-80年で枯渇する
(3)廃棄物の取扱が非常に難しい
(4)建設、運用費に加えて、廃棄物処理、手当、廃炉、揚水発電所建設などの関連費用が非常に大きい
(5)軍事転用の可能性がある
放射能汚染の問題はご存知だと思います。
一つ知っておきたいのは、汚染場所が原子力関連施設付近だけではないということです。
廃棄物には気体や液体があり、これらはフィルターを通して大気や海洋に放出されています。
大気中や海洋に放出された放射線物質がどうなるか、誰もわかりません。
使用済み燃料(発電後のウラン)は再処理や廃棄のために、道路や海を通って、各発電所から再処理工場や海外へ運ばれています。
あなたの家の前で放射能漏れが起こる可能性だってありますし、食卓に上る食べ物に含まれる可能性だって無いわけではありません。
さらに、ウランは枯渇性資源で、今世紀中には枯渇します。
一方原子力発電によって出された廃棄物は、その放射能が人体に安全になるには、数万年かかります。
原子力発電によって安くて大量の電気を得られるのは、100年弱の期間の数世代の人々でしかないのに、その面倒なゴミは数百世代の人々に押し付けられることになります。
地球温暖化問題は、過去に化石燃料を燃やすことで、大気中に大量廃棄された二酸化炭素(CO2)が、将来の世代に悪影響を及ぼすことがわかったから、問題になって対策を考えています。
であれば、原子力発電だって、同じように将来の世代に悪影響を及ぼす可能性があります。
むしろ、二酸化炭素は現在の技術や努力で減らすことができますが、放射性廃棄物は減らすことができない分、火力発電よりもずっとたちが悪いかもしれません。
「地球温暖化対策のための発電」という意味での原子力発電は、火力発電などよりずっといいのですが、 「将来にゴミを残さない持続可能な発電」という意味だったら、 原子力発電が選ばれるのは、少しおかしな感じがします。
原子力発電の再処理とは?
原子力発電の課題の一つに「再処理」があります。
原子力発電では原料にウランを使いますが、ウランには、原発で核分裂を起こすウラン235と、分裂しないウラン238を混合して使います。(ウラン235 が4%、ウラン238が96%)
ウラン235 だけだと核爆発を起こしてしまうため、ウラン238 をまぜて反応を抑制しているのです。
(正確には天然ウランには少量のウラン235しか含まれず安定的なので、ウラン235を濃縮して反応を起こしています)
原発でウランが燃焼されて残る使用済燃料には、ウラン235が1%とプルトニウム1%が含まれます。このウラン235とプルトニウムあわせて2%分は、分裂性で核燃料として再利用できます。
もともとの核燃料の核分裂性割合が4%分で、使用済燃料にも2%分使えるものが残っているのですから、実質半分をリサイクルできるわけです。
そこで、使用済核燃料を再処理して、もう一度燃料として使える形にしようというのが、「再処理」と呼ばれるものです。
核燃料
┌―─────────∬────────────┐
|■■■■■■■■■■∬■■■■□□□□□□□□|
└―――──────―∬―────―──――――┘
■ウラン238 96% □ウラン235 4%
使用済核燃料
┌―─────────∬────────────┐
|■■■■■■■■■■∬********◆◆□□|
└―――──────―∬―────―──――――┘
■ウラン238 94% □ウラン235 1%
◆プルトニウム 1%
*廃棄物 3%
この「再処理」を行う工場が再処理工場とよばれるもので、青森県の 六ヶ所村に建設され、まもなく操業を開始する予定です。
核燃料をリサイクルすることは危険なのか?
ウラン鉱山を持たない日本では、できる限りリサイクルして資源消費を減らそうとする核燃料サイクルを推進しています。
ただしこのリサイクルにはかなり危険な部分があります。
(1) 再処理で発生する放射線漏洩リスク
再処理工場でも放射線漏洩リスクが生まれます。
使用済み燃料のまま廃棄していれば、漏洩リスクは低くなりますが
再処理作業をすることで、わざわざ高レベルの放射能と向き合うことになります。
また再処理後に高レベル放射性廃棄物が生まれます。
高レベル放射線廃棄物は300度くらいの高熱でさらに高放射能をもつので、30-50年間自然冷却させた後に埋設することになります。
(2) サイクルの実現性リスク
核燃料サイクルというのは、次の手順で進みます。
原子力発電所
↓
中間貯蔵 (*)
↓
再処理 ――――――→ 高レベル放射性廃棄物貯蔵
↓ ↓
MOX燃料加工 (*) 最終処分(地層処分) (*)
↓
プルサーマル運用原発
しかし、 (*)の印をつけた処理については、工場や施設がまだできていません。
建設中でもなく、まだ計画中というところもあります。
遅れているのは、立地の問題が一番のようです。
原発は稼動し続けていますから、使用済核燃料が出続けます。
これらが廃棄物と認められれば、最終処分に向かうのですが、すべて再利用前提となっているので、再利用対象の使用済核燃料は 原発や再処理工場に貯められつづけています。
核燃料サイクルされることが前提で、見切り発車しているため、今後どんな問題が起こるかわかりません。
(3) 核保有のリスク
再処理工場はプルトニウムの濃縮が可能で、これにより核保有の危険が高まります。
現在世界各国で原子力発電が推進され始めています。
しかし、すべての国で再処理工場を作ることはできないため、各国が再処理工場のある国に処理済燃料を送り、再処理を委託する可能性がでてきます。
もし、日本が世界の再処理工場機能を担い、生成されたプルトニウムが平和利用以外のものに使われたとしたら、いったいどうなるのでしょうか?
また、核不拡散条約にて「余剰プルトニウムは持たない」と宣言している日本では、すでに45トンのプルトニウムを保有しています。海外に再処理を委託して手に入れたものが多くを占めます。
すでに危険な状態なのかもしれません。
(4) 核燃料の輸送リスク
サイクル処理が無ければ、原発から出た放射性物質はそのまま処分場へ運ばれます。
しかし、サイクル処理があると、放射性物質は、いくつもの施設を経由することになります。
(再処理が無いとき)
原発 ―→ 高レベル放射性廃棄物貯蔵施設 ―→ 最終処分場
(再処理があるとき)
原発 ―→ 中間貯蔵施設 ―→ 再処理工場 ―┬→ 原発
↓
高レベル放射性廃棄物貯蔵施設
↓
最終処分場
すべての施設が同じ場所にあれば輸送リスクは小さいでしょうが、このような施設は地方の僻地にあることが多いでしょう。
今は青森県にこれらの施設が集中していますが、青森県は最終処分は行わないと決めています。
こういった施設が離れれば離れるほど、輸送距離が長くなり、危険が増します。
原発の危険性を克服するだけの価値があるのか?
以上のような危険性が核燃料サイクルにはあります。
人間が快適に生きていくには何かを犠牲にしなければなりません。
ですから、一つの課題があったなら、危険性を把握し、他の代替手段との優位性比較を行い、
それでもやる価値があるのならば、 危険性を克服するだけの技術や体制をつくり、
現在や未来への責任を持つ決意を持って、挑戦していくべきでしょう。
原子力発電の運用や放射性廃棄物だけでも危険性や課題が多いのに、核燃料サイクルはもっと危険性や課題が増します。
そこまでの価値があるのでしょうか?
危険性を克服するだけの技術や体制があるのでしょうか?
未来への責任を感じているでしょうか?
核燃料サイクルを行う前に、私たちはほかにやるべきことがあるのではないでしょうか?
残念ながらいますぐ原子力発電は捨てられない
現実を考えれば、私たちはいますぐに原子力発電を止めることはできません。
需要に応えるだけの代替策がないからです。
原子力発電を止めて火力発電に切り替えたなら、今度は温暖化の問題にぶつかります。
水力や風力やに切り替えたくても、供給量があまりにも不足して、産業分野はおろか、一般生活も支えきれないでしょう。
ただし、火力発電や原子力発電にいつまでも頼っていられません。
そこで、原子力発電所の寿命が約30−40年ですから、現在稼動しているものだけにして、さらに、できる限り化石燃料やウランの利用期間、利用量を少なくして、後世や環境への影響を少なくする方法を考えなければならないと思うのです。
では、どうしたらよいでしょうか?
実は今の私たちには、環境に配慮しながら持続可能な形で、しかも快適に電気を使うことができる多くの選択肢があるのです。
それは、次のようなことです。
(1) 無駄な電気を減らす
(2) 熱と光、電気を別々に考える
(3) 自前のエネルギー源を持つ
(4) 多くの発電方式を使う
無駄な電気を減らす
日本全体の電力消費を減らすといってもピンときませんが、あなた様の家庭の電力消費を減らすのならば、できないことはないでしょう。
私の経験から言うと、電気代に無関心だったときから、配慮するようにライフスタイルを変えたところ、
自宅の生活時間が増えたにもかかわらず、電気代を約3割減らすことができました。
もし国民全体の消費を3割減らすことができるのなら、原発をなくせるくらいの量になってしまいますね。
熱と光、電気を別々に考える
今の私たちの生活で電気はデジタル処理などの高度なものもあれば、熱や光といった単純なものにも使われています。
熱や光は他のもので代替できるのです。
例えば、暖房はエアコンでなくても、薪を燃やしてもいいですし、お湯でも代替できます。
電気はもともと燃やして得られた熱を電気にしているのですから、熱→電気→熱 と変換するときに無駄が多く生まれます。
熱は熱のまま使うほうが効率が高いのです。
照明も同様です。
昼間太陽の光が燦燦と降り注いでいるのに、部屋の窓の位置や日射の取り込みがうまくないために、 お手軽な電気照明を使っています。
日射を十分に活かすだけの住宅やビルの設計をしていれば、光も電気に丸々頼らなくて済むようになります。
テレビやパソコンなどの高度電化製品は電気でしか動かせません。
こういうものにだけ大切な電気を使うようになれば、電気の消費は格段に減りますね。
自前のエネルギー源を持つ
日本には発電所からでなくとも、自前で電気を作る方法があります。
太陽電池は屋根の上から降り注ぐ太陽光から電気を作れます。
家庭で使えるような小型の風力発電機も売られています。
電気が引かれていないような農村やイベント会場では軽油のディーゼル発電機だって使われています。
最近ではてんぷら油を使った発電機もあります。
ガス会社が開発したエコウィルはガスで発電できます。
家庭用燃料電池もガスから発電しますね。
電力網を維持するのにも、多大なコストがかかっていますし、遠い発電所から電気を送るだけでもロスが生まれているのですから、自分の使う分は自分で発電する方が効率はよいのです。
確かに機械を買う必要はありますが、電力インフラから独立して、原子力発電に頼らず生きる方法も十分にあるのです。
多くの発電方式を使う
電力会社は企業ですから収益の最も上がる方法を選んでいます。
規模が大きければ、それだけコストを抑えられるのですから、発電方式は少ないほうがメリットは大きくなります。
しかし自然の力をもっと使える発電方式は数多くあります。
風の強い地域は風力、海沿いの地域は潮力や海洋温度差発電、山間部では水力や地熱、平野部では太陽光や太陽熱をもっと取り入れてもいいのではないでしょうか?
中央集約ではなく、地域の特性に合わせた発電方式を創り、育てていくこともできます。
少なくとも、原子力や火力に頼らないと生活していけないということは全く無いと思います。
「いただきます」の気持ち
ウランも石油と同様、今世紀中には枯渇するといわれています。
私たちはわずか100年足らずで、地球が何万年もかけてつくった天然資源を食いつぶすことになります。
私たちはどう転んでも、地球や太陽の恵みをもらって生きていくしかありません。
ところで、私達はご飯を食べるときに「いただきます」と言います。
この「いただきます」は、食事を作ってくれた方だけに言っていうのではありません。
お野菜やお肉を作ってくれた人に対しても、また、野菜や魚、牛や鳥 を育んでくれた、自然や大地、太陽に対して、「いただきます」と感謝の気持ちを表しているのです。
では、電気に対してはどうでしょう?
石油や石炭、LNG、ウランなど地球が何万年も育んできた資源を使って得た電気に対して、私たちは「感謝」の心を持っているでしょうか?
「いただきますと言いなさい」「食べ残しをしない」と子供たちに教えるのと同じように、
電気を使うときにも「感謝の気持ち」と「食べ残しをしない」ことが大切ではないでしょうか?
あなたなりに原発はYESでしょうか?NOでしょうか?どういうお考えでしょうか?
少しでもお役に立てれば、幸いです。
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